特車申請で利用できる制度について【2025年最新版】
特殊車両(特車)とは、道路法で定められた一般的な通行制限値(幅2.5m・高さ3.8m・長さ12.0m・総重量20tなど)を超える車両のことを指します。これらの車両はそのままでは道路を通行できず、事前に国土交通省や道路管理者の許可または確認を受ける必要があります。
1. 特殊車両通行許可制度
特殊車両通行許可制度とは、車両の寸法や重量が道路法で定める制限値を超える場合に、通行経路・日時・条件などを審査したうえで、道路管理者が通行を許可する制度です。
■ 制限値(道路法施行令第3条・第4条)
- 幅:2.5メートル以下
- 高さ:3.8メートル以下
- 長さ:12.0メートル以下(連結車:最大21m程度)
- 総重量:20トン以下(車両構造・軸配置により増加可)
- 軸重:10トン以下(通常)
上記のいずれかを超える車両は、道路構造保全の観点から道路法第47条の2により通行許可が必要とされています。
■ 対象となる車両の例
- 大型建設機械(クレーン車、ショベルローダーなど)
- 特殊な積載形状の車両(長尺・重量物等)
- セミトレーラ、フルトレーラなどの連結車両
■ 有効期間(2025年4月版ハンドブックより)
対象 | 優良事業者 | 一般事業者 |
---|---|---|
寸法・重量が一定基準を超える車両 | 2年以内 | 1年以内 |
上記以外の車両 | 4年以内 | 2年以内 |
出典:関東地方整備局「特殊車両通行ハンドブック(2025年4月版)」
■ 申請方法
原則として、特殊車両通行許可オンライン申請システムを使用します。申請には次のような情報が必要です。
- 車両諸元(寸法、重量、軸配置など)
- 通行経路(経路図・起点・終点)
- 通行予定日
■ 申請期間
標準処理期間は、新規3週間、更新2週間ほどとされています。
ただし、これは個別審査のない国道のみの経路などの場合であり、実際には通行経路の本数や構造によって変動します。
実務上は、2~3ヶ月程度で許可が下りるケースが多く見られます。
なお、以下の港湾などでは1~2週間ほどで許可が下りることが多いです:
- 名古屋港
- 三河港
- 四日市港
2. 特殊車両通行確認制度(令和4年新設)
通行確認制度とは、2022年(令和4年)より本格運用が開始されたオンライン判定制度です。道路構造が電子化されている区間を対象に、ETC2.0車載器を装着した車両が、許可不要で通行可能かどうかを事前に確認できる仕組みです。
■ 主な特徴
- 出発地・到着地を入力するだけで、要許可 or 不要が判定される
- HIDO(一般財団法人 道路新産業開発機構)が運営
- 検索結果に「通行可能」「通行不可(許可必要)」が表示
- 車両事前登録(車両・ETC2.0情報)が必要
■ 利用料金(公式資料より)
- 車両登録:1台につき 5,000円
- 確認1件(双方向):600円(片道400円+追加100円/10km)
以下は、特殊車両通行確認制度と通行許可制度の違いや手続きの流れ、料金体系の比較図です。
出典:HIDO(特車通行確認制度)
特殊車両通行確認制度の概要
3. 特車ゴールド制度(ETC2.0簡素化制度)
特車ゴールド制度は、過去の許可実績や違反履歴等を評価し、要件を満たした事業者がより簡素な手続きで通行許可を取得できる制度です。特にETC2.0を活用した走行経路の一元管理や自動更新など、実務上のメリットが多い制度です。
■ 対象車両
- ETC2.0(業務支援型)車載器を搭載し、大型車誘導区間を含む経路を通行する車両
- トラクタや単車など、事前登録済みの車両に限る(トレーラは対象外)
■ 主なメリット
- 複数の迂回経路を1申請に統合可能(大型車誘導区間)
- 「ワンクリック更新」:違反がなければメール認証のみで許可延長可能
- 許可証の発行や帳票出力も簡素化
■ 注意点
- 大型車誘導区間を含まない経路では利用不可
- 車載器を交換した場合は再登録が必要
- 違反歴がある場合、自動更新や簡素化対象外となる
■ 申請流れのイメージ図
詳細はこちら:
特殊車両通行許可申請の申請予約の際に以下のようなポップが表示されます。
利用する場合は以下のような算定画面が出てきます。
特車ゴールドで満期をむかえるとこんな感じのメールが送られてきます。更新する場合はこのメールより更新します
出典:中部地方整備局「特車ゴールド制度」
特殊車両オンライン申請システム操作マニュアル
特車ゴールド制度の対象車両と図解
以下は、特車ゴールド制度において対象となる車両の諸元要件と、代表的な「特例5車種」「追加3車種」を示した図です。
出典:中部地方整備局「特車ゴールド制度説明資料(PDF)」より
4. 制度の比較表
制度名 | 対象車両 | 申請・確認方法 | 特徴 |
---|---|---|---|
特殊車両通行許可制度 | 制限値を超えるすべての特車 | 道路管理者への許可申請(オンライン) | すべての道路で適用。通行条件の設定可 |
特殊車両通行確認制度 | ETC2.0装着車両(条件適合) | オンラインで即時確認(HIDO運用) | 許可不要のルートを確認し即運行可能 |
特車ゴールド制度 | ETC2.0搭載・登録済車両 | オンライン申請+条件付き簡素化 | 許可更新や経路統合が簡素化される |
5. ご相談・お問い合わせ
特殊車両を使用する運送や建設業務において、正確な制度選定・確実な許可取得は事業継続に直結します。当事務所では、豊富な実務経験をもとに制度の正確な判断と申請実務の代行を行っております。制度ごとの違いなど、不安がある方はぜひお気軽にご相談ください。
問い合わせの際には、車両諸元、経路、いつから許可が必要なのかなどを準備いただくとスムーズです。
※本記事は以下の出典に基づき構成しています:
・国土交通省 関東地方整備局「特殊車両通行ハンドブック(2025年4月版)」
・中部地方整備局「特車ゴールド制度」
・HIDO 特車通行確認制度サイト
・特殊車両オンライン申請支援マニュアル
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