以前まちゼミにて講義予定であったうなぎと許可の講義を、最新の情報も加え記事にしてみました。全6回程度を予定しています。息抜き程度にお楽しみください。
なお、本ブログに記載する情報の利用については、あくまで参考としてご活用ください。筆者が情報の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。
浜名湖と三河から読み解く「うなぎ × 文化・歴史」入門
うなぎは日本の食文化の象徴。静岡県・浜名湖と愛知県・三河は、その近代養鰻を切り拓き、いまも進化を続ける“源流”です。本稿では、史料・自治体資料・漁協情報に基づき、うなぎの歴史と地域の歩みをやさしく解説します。
1. なぜ「浜名湖」「三河」が特別なの?
明治〜大正期にかけて、日本の養鰻は一気に産業化しました。とくに浜名湖では、近代養鰻の先駆者・服部倉治郎が1900年に大規模養鰻池を造成。温暖な気候・地下水・汽水湖という条件が重なり、全国を牽引する産地へと発展しました[1][2]。
2. 浜名湖:近代養鰻の“はじまり”と拡大
・起点(明治):1900年、服部倉治郎が浜名湖東岸・舞阪に約8ヘクタール規模の養鰻池を開設(市史料・漁協系資料に記録)[1][2]。
・大正〜昭和初期:公有水面埋立や開墾助成の追い風で拡大、昭和初期には湖岸の養殖池が約600ヘクタールに達し全盛期へ[1]。
・戦後の再興:1949年に浜名湖養魚漁業組合が発足、1960年代には配合飼料(1965)・ハウス加温養鰻(1966)が普及して生残率や効率が向上[3]。
今日「浜名湖うなぎ」は、浜名湖地域(浜松市・湖西市)で、浜名湖養魚漁協の組合員が半分以上の期間を育成したニホンウナギを指す地域ブランドとして定義されています[4]。トレーサビリティや地域ブランド認証の取り組みも進み、安全・安心を打ち出しています[5]。
3. 三河・一色:台風復興から“量と質”を両立
うなぎ養殖は明治後期に三河へ広まり、一色町では明治37年に12ha規模の民間養鰻が始動。伊勢湾台風(1959)以後の農地転用や養鰻専用水道・配合飼料・ハウス加温の整備で飛躍し、現在も全国有数の一大産地です[6]。愛知県は近年も全国上位の生産地で、「新仔」を中心に柔らかな身質を特徴とする地域像を発信しています[8]。
4. 食文化としてのうなぎ:江戸から現代へ
江戸後期に「開いて焼く」技法やタレ文化が洗練され、江戸前の名店番付も登場。明治以降は浜名湖・三河など生産地の拡大が“食”を下支えしました。ひつまぶし等の地域食文化も広がり、現在の“国民的ごちそう”の地位に至っています(総論資料・学術レビュー参照)[9]。
5. いま・これから:ブランド化と技術革新
・ブランド強化:浜名湖養魚漁協は2024〜25年にかけて新基準のブランド発表やEC展開を強化。万博出展の動きも[10][11]。
・生産技術:ハウス加温や飼料・水質管理は成熟段階。完全養殖・飼育装置の改良や量産水槽の普及など、新技術の社会実装が注目されています(詳細は次回以降で解説予定)。
6. どこで楽しめる?(地元の食体験ヒント)
浜松市の公式コンテンツでは、養鰻の歴史解説とともに地域店の情報も発信[12]。三河・一色では産地直売やイベント(例:うなぎまつり)の話題もあります[13]。観光情報とあわせてチェックを。
参考・出典
[1]
浜松市文化遺産デジタルアーカイブ「うなぎ養殖」:昭和初期に養殖池600ヘクタール、起源と拡大の概観。掲載本文内に服部倉治郎・中村源左衛門の記述あり。
ページ/
詳細
[2]
浜名湖養魚漁業協同組合「浜名湖うなぎについて」:日本の養鰻のはじまり、浜名湖の歴史年表など。
https://www.hamanako-eel.jp/about/
[3]
浜松市「歴史的風致形成計画 資料 2-5 浜名湖の漁労・養殖」:戦後復興、配合飼料(1965)・ハウス養鰻(1966)普及の記述。PDF
リンク
[4]
浜名湖養魚漁協「浜名湖うなぎの定義」:地理的範囲・育成期間の定義。
同上
[5]
浜名湖養魚漁協「安心・安全への取り組み」:トレーサビリティ、地域ブランド認証の情報。
https://maruhama.or.jp/fr/2
[6]
西尾市観光協会「西尾市の一色産うなぎ」:一色の導入・拡大史、伊勢湾台風後の発展。
https://nishiokanko.com/list/special/eel/
[7]
一色うなぎ漁業協同組合「うなぎの話/組合沿革」:導入年・専用水道・施設化の歩み。
歴史/
沿革
[8]
愛知県「つかみどころがある あいちのウナギの話」(2024-04-15 更新):県の生産位置づけと養殖工程。
公式
[9]
相原 修「食文化の伝統と保存」商学集志 87巻1号(2017):生産量推移と地域の位置づけの総論。PDF
リンク
[10]
PR TIMES「浜名湖うなぎ新ブランド」等の発表資料(2024–2025):ブランド基準・販路拡大。
例
[11]
浜松経済新聞(2024-11-29)「浜名湖ウナギ新ブランド『でしこ』が初出荷 養鰻最高傑作で日本一目指す」【ニュース記事】:
https://hamamatsu.keizai.biz/headline/3525/
[12]
浜松市 はままつフードパーク「浜松のうなぎのヒミツ」:わかりやすい解説ページ。
公式
[13]
CBC/TBS NEWS DIG「三河一色うなぎまつり」(2024-06-02):地域イベントの近年例。
記事
※本稿は各出典の事実記載(年・制度・定義等)を基に再構成した解説記事です。